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東京高等裁判所 平成元年(行コ)1号 判決 1989年7月19日

控訴人(原告) 株式会社保土ケ谷ビル 外一名

被控訴人(被告) 横浜市保土ケ谷区長

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実

一  控訴代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人が控訴人株式会社保土ケ谷ビルに対し昭和五八年七月二日付けでした事業所税更正決定を取り消す。被控訴人が控訴人保土ケ谷再開発株式会社に対し昭和五八年七月二日付けでした事業所税更正決定を取り消す。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

二  当事者双方の主張は、次のとおり付加するほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これをここに引用する。

(控訴人ら)

仮に、本件ビルが課税対象になるとしても、本件各処分の課税対象面積には誤りがある。

1  本件ビルの四階部分には、別紙図面(原判決別図五別表五に加筆したもの)に記載のとおり、専ら五階部分以上の住宅部分の用に供するための給水管、排水管、ガス管、電気配線等の配管スペースに充てられている部分一二箇所がある。その広さは、各〇・八一平方メートル、合計九・七二平方メートルである。右の部分は、四階部分を通過するのみで、四階の各室がこれを利用することはなく、右は非課税部分である「パイプスペース」部分に当たる。したがって、右のパイプスペース部分は課税対象から除外されるべきである。面積は、同図面別表の括弧内に記載のとおりとなる。

2  本件ビルのうち、地下二階から地上一階までの床面積、非課税床面積、課税床面積は、別表(一)ないし(三)記載のとおりである。

(被控訴人)

控訴人の右主張は争う。

控訴人の1の主張は、時機に遅れたものか、故意に訴訟を遅延させようとするもので、地方税法一九条の一四により却下されるべきである。

被控訴人が別紙図面別表の<3>Aのパイプスペースを非課税としたのは、それが地方税法七〇一条の三四第四項第二号に規定する非課税施設としての消防用施設の用に供されるため、同法施行令第五六条の四三第二項の規定を適用したためであり、単に「パイプスペース」なるが故に非課税としたものではない。

三  証拠<省略>

理由

一  当裁判所も、控訴人らの本訴請求は理由がなく棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり、付加し、訂正し、削除するほかは、原判決理由説示と同一であるから、これをここに引用する。

1  原判決二二枚目裏一行目の「ことが認証」及び同二三枚目表四行目の「こと」から同五行目の「認証」までを各「ものとして認可」と各改める。

2  同二四枚目裏九行目の「しかしながら、」の次に「新増設事業所税は事業所用家屋の新増設を課税客体とする税である(法七〇一条の三二第一項)上、」を、同二五枚目表一〇行目の「は」の次に「な」を各加える。

3  同二七枚目裏九行目の「家屋」の次に「客観的状態、すなわち、その」を、同一〇行目の「もの」の次に「以外のもの」を各加え、同二九枚目表一行目の「、第五」を削除し、同二行目の「五」を「一ないし六」と改め、同三行目の「三」の次に「、控訴人保土ケ谷再開発代表者本人尋問の結果により成立の認められる甲B第五号証」を、同四行目の「結果」の次に「(各一部)」を各加え、同裏一〇行目から末行にかけての「ダイニングキッチン、」を削除し、同三〇枚目表一行目の「ものの、」の次に「居住用マンションに通常存する押入れ及び洗濯物の干場又はそれに代替しうる設備はなく、」を、同三一枚目表一行目の「で、」の次に「建物の構造、設備も居住用マンションのものとは異なり、」を各加え、同七行目の「したがって」から同八行目の「から、」までを「以上の認定の四階部分の構造、設備、販売の経緯等によれば、右四階部分は、法七〇一条の三一第一項七号にいう「人の居住の用に供するもの以外のもの」に当たるものと認められ、したがって、」と、同裏一〇行目の「及び」を「は採用できず、他に前示認定を左右するに足りる証拠はなく、したがって、」と改める。

4  同三三枚目裏三行目から四行目にかけての「いるが、」の次に「控訴会社各代表者本人尋問の結果によれば、右図面は本訴提起後に控訴人らが同事務所に依頼して作成させたものであることが認められるのであって、」を、同七行目の「は」の次に「被控訴人の本件担当者として」を各加える。

5  同三六枚目裏六行目の次に改行の上、次のとおり加える「控訴人は、本件ビルの四階部分には、別紙図面に記載のとおり、専ら五階部分以上の住宅部分の用に供するための給水管、排水管、ガス管、電気配線等の配管スペースに充てられている部分一二箇所があり、この部分は非課税部分として課税標準から控除すべきである、と主張している(被控訴人は、右主張が時機に遅れたものか、故意に訴訟を遅延させるもので、地方税法一九条の一四に違反するというが、右主張により本訴を遅延せしめるものでなく、また地方税法の右規定に違反するとも認め難いから、右主張は採用しない。)。しかし、事業所税の課税標準となる「床面積」は、前示2(一)のとおりであり、それの利用が当該事業所の利用形態によって非課税となるのはその旨の規定のある場合であって、単に、当該事業所の用に使われていないとの理由で非課税となるものではない、と解される。そして、本件ビルについて、「パイプスペース」の一部が非課税とされたのは、右のパイプスペースに屋内消火栓等が存し、法七〇一条の三四第四項第二号、令五六条の四三第二項に該当すると認められるためであり、控訴人主張のパイプスペースについてかかる非課税の範囲に属すると解すべき規定はなく、他にこれにつき非課税を相当とする事情は認められないから、控訴人の右主張は失当である。」。

二  以上の次第であって、原判決は相当であり、控訴人らの本件控訴はいずれも理由がないから棄却すべく、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 鈴木弘 伊東すみ子 筧康生)

別紙図面、別表(一)ないし(三)<省略>

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